ラーメン二郎 相模大野店 HPより引用http://sumoji.jp/
[ラーメン屋からするとあれはラーメンではない。二郎という食べ物だ。]
なんてことを二郎が流行り出した頃、敬意をこめながら師匠と話していたことを思い出します。
結構独特な作り方をするので、それを知った時にその言葉は適切だなー。なんて思ったわけです。
少しひと昔前のラーメン業界では二郎系なら潰れない。という話が通説となっていました。
その為インスパイア系と呼ばれるジャンルが増えたのではないでしょうか?
これを書いたらコアなファンに怒られそうですが、二郎系のスープの原価はラーメン屋基準で考えると比較的安めです。お店によって当然違いますが、基本的に乾物(煮干しや昆布)を使わずチャーシューの茹で汁と背油でスープ、豚骨で作るようなやり方です。肉スープと呼ばれるジャンルですね。(逆に乾物系メインのスープは原価がとてもかかります。)
スープではなく、「かえし」に例の魔法の粉を入れる。このことによりグルタミン酸を飛び抜けて全開にしているラーメンなので中毒性が高くなっているラーメンなのです。
あとはあの特長的な麺です。メインのオーション粉使ってゴリゴリな食感も良いですよね。昔はすごく安かったのですが二郎系が増えてオーションの需要が高まり高くなって来ています。
オーション粉って何?って思った方。わかりやすく米で例えると、一般的な小麦粉は精米で無洗米で設定したくらいのつやつやの白米。オーション粉は8ぶつきの米。こう考えると理解しやすいんじゃないでしょうか?わかりにくいですかね?
私もあのごわごわした感じが好きだったのでオーションと国産小麦の全粒粉を配合した麺をメインに使っていました。
香り高く「麺を食べてる」感じがするから。
開店前は製麺所から何十種類もサンプル貰って、
茹でて味付けもしてない麺だけを食べて一次審査。
その審査を突破したら、麺が主役になれるメニューは油そば。油そばのタレに負けないくらいの麺を選ぶ。
この感覚で選んだら私はオーション粉と全粒粉配合に決まりました。そんな主張する麺でもスープに合わせると存在感を放ちながらも調和する麺だったので採用したという形。
昔話で話が脱線しましたね。
では偉大なラーメン二郎の歴史を軽く紹介。
はじめに:ラーメン二郎とは何か
ラーメン二郎(らーめんじろう)は、日本のラーメン業界において独自のスタイルを確立し、多くのファンに愛されている名店です。ボリューム満点の「二郎系ラーメン」は、その独特なスタイルと味わいで一度食べたら忘れられない存在となり、多くの熱狂的なファンを生み出しました。
ラーメン二郎の創業:一つの名店の誕生
ラーメン二郎の歴史は、1968年に遡ります。創業者である山田拓美氏が、東京都三田に最初の店舗をオープンしました。当時、ラーメン店は既に多く存在していましたが、ラーメン二郎は他店とは一線を画すスタイルで多くのラーメン愛好者を引き付けました。また山田氏は慶應義塾の特選塾員にも選ばれたことがある方。
ラーメン二郎の特徴は、その量にあります。通常のラーメンよりも遥かに多い麺の量、大量の野菜、そして厚切りのチャーシューが一杯に盛り付けられ、そのボリューム感は「デカ盛り」として知られるようになりました。また、ニンニクや背脂の量を調整できる「コール」と呼ばれるマシマシなどの独特の注文スタイルも、ラーメン二郎の人気を支える要素となっています。
「二郎系ラーメン」の誕生:独自のスタイルの確立
ラーメン二郎が他のラーメン店と大きく異なる点は、その独自のスタイルです。「二郎系ラーメン」とは、通常のラーメンとは一線を画すそのボリュームと味付け、そして「コール」によるカスタマイズが特徴です。このスタイルは、単にラーメンを提供するだけでなく、一つの文化として確立され、多くの「ジロリアン」と呼ばれるファンを生み出しました。
「二郎系ラーメン」は、シンプルながらも濃厚な豚骨ベースのスープと極太の麺、そしてトッピングとして大量の野菜やチャーシュー、さらにニンニクや背脂を加えることで、他にはない独特の味わいを生み出します。この味とボリュームが組み合わさることで、ラーメン二郎は一度食べたら忘れられない存在となり、多くの人々がその虜になっていきました。
「ジロリアン」と呼ばれるコアなファンたちの存在
ラーメン二郎には、他のラーメン店には見られない特徴的なファン層が存在します。「ジロリアン」と呼ばれるこれらのファンは、ラーメン二郎の一杯に対して強い愛着を持ち、店舗巡りやコールの研究など、独自の楽しみ方を見出しています。ジロリアンたちは、単なるラーメン愛好者ではなく、ラーメン二郎を一つの文化として捉えており、そのコミュニティはインターネット上でも活発に活動しています。
ジロリアンたちの間では、各店舗の特徴や提供されるラーメンの違いが話題となり、それぞれの店舗のランキングやレビューがSNSやブログで広く共有されています。また、ジロリアンたちは「ラーメン二郎のコール」を独自に研究し、自分だけの「完璧な一杯」を追求することで、ラーメン二郎の魅力をさらに深めています。
これにより、ラーメン二郎は単なるラーメン店を超えて、一つの文化として日本の食文化に深く根付いた存在となりました。
二郎から学ぶべき点
強烈な見た目
料理は見た目も味の内。料理を志したものなら必ず耳にする言葉です。本当は日本料理とか刺身の盛り付けなど繊細な形に使うのでしょうが、今回はイレギュラーな使い方ですかね?見て「おおぉ(笑)」ってなる見た目。
写真を取ったら誰かに見せたくなる見た目。共有してすごいよねー!って言いたくなる見た目。
上記のよく目にする行動。「見た目が広告塔になる」という感覚わかりますか?店主は何もしなくても商品が独り歩きしてくれる。そしてお店に人が集まる。映え商品という物が世に出回ったのはまさにその考え。
そしてその見た目よりも強烈にインパクトを与える、旨味要素のグルタミン酸全開のラーメン。
中毒になるというのも分かる気がします。
お好みの設定
経営者によって違いますが、「ラーメンは提供された状態ものが完成系、メニューに書いてある通りの物が完成系」と思って運営している人が結構多いと思います。
分かりやすく雑に言うと
「色々な素材を合わせて、バランスを調整して完璧な1杯として落とし込んでいるから、いじるな!そのまま食え!」
ってことです。要するに「麺の固さや味の濃度の調整は受け付けません」と貼り紙しているお店です。
この店を悪く言うつもりはありません。この貼り紙を張り出す前に店主自身が全部試している筈です。
試した結果、合わないからお客さんに出したくない。当然のことです。作った本人が確かめて嫌だと思ったのですから。
そこを逆手に取ったというわけではないと思いますが、二郎が人気になった理由の一つとして、今までラーメン屋でお好みを言うという作業はあまりなく、このお好みのコールが新鮮に映ったのだと思います。
自由にカスタマイズできるんだ!?ここのお店の味好きだけど、本当はこうしたかったんだよ!
そんな事あると思います。それを叶える事が出来る・お店のメニューが自分好みになる優越感。
お好み設定でこの心をくすぐることができたのだと思います。
コスパの良さ
コストパフォーマンスを略してコスパ。一般用語になりましたね。
「二郎はコスパがいいのか?」だけの話になると、正直私は「うーん」と思います。
言っておきますが、二郎系は好きですからね。
まずメンマがない。乾物系が入ってないスープ。もやしとキャベツ、背アブラ、ニンニク。
チャーシューの部位は比較的安価な腕肉、茹で終わったらタレに漬け込むのみ。
↓は豚肉の取引価格。
品目 第1四分位値 重量中央値 第3四分位値 刈込み平均値 取引重量 かたロース 1,328円 1,512円 1,582円 1,486円 79,702kg うで 853円 945円 990円 932円 140,412kg ロース 1,287円 1,367円 1,483円 1,389円 145,468kg ばら 1,350円 1,460円 1,529円 1,470円 185,885kg もも 788円 861円 908円 856円 215,911kg ヒレ 1,296円 1,524円 1,577円 1,474円 13,533kg セット 1,118円 1,155円 1,193円 1,151円 986,547kg 合計 1,767,458kg 公益財団法人 日本食肉流通センターHPより引用 https://www.jmtc.or.jp/KohyoDaySvl?root=souba&CENCD=1&patternID=21
でも、あのもやしとキャベツの盛り、チャーシューの厚さを見せつけられると、やはりコスパの良い1杯に見えます。
ちなみにこのコスパについての欄は少し前の感覚で書いてます。
今は背脂も手に入りにくく値上がり、小麦も値段上がっている、光熱費も上がっている、最低賃金の値上げでかなり辛いはずなので、お客さん側からすれば本当にコスパが良いです。経営側からすると利益取りずらくなりましたね。という感じです。
自身が注意する点
・原価を顧みずにやってしまう事
マシマシも濃い目も通常より原価がかかるのは当然の事。お客さんの融通に合わせるということは原価が変動しやすいということです。どこまでやってあげれるのか。原価に対しての許容範囲をしっかり設定しないと商売ではなく慈善事業です。
・見た目だけで味が付いていかない事
盛れば・映えさせれば、話題になってお店は繁盛する!って安易に思ってしまわない事です。
飲食店は「美味しいが当たり前」が根底にあります。見た目だけ良くても味がついて来ないのであれば、ただただ苦痛な食事になり「次の来店」がありません。
まとめ
新しいジャンル・新しい文化を創り出したラーメン二郎。合わせてインスパイア系というジャンルまでも作り出しました。
成功の中に理由あり。学ぶところがたくさんあります。
ラーメン屋の経営は飲食店の中で一番難しいと言われていますので、
ほかの業態にも通ずる学びがあると思います。
個人的には家系の店が作る二郎系が好きです。モヤシの水分がスープに出ても負けないので。
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